11.232018
団地を読み解く
「 団地を読み解く ~戦後の理想的な住まい「団地」はいかに設計されたか~ 」という講演会に参加してきました。
設計事務所を開く傍ら、団地の魅力に取り憑かれ、「団地不動産」という団地専門の不動産屋も運営されている 吉永健一氏の講演でした。
団地と言っても、4種類あり、
①公団(現UR)・公社が建てたもの(戦後の住宅不足の解消を起源とし住宅供給を目的としたもの。決められた月収以上の人が入れる。)
②市営・府営のもの(福祉施策によるもの。決められた月収以下の人が入れる。財政不足であまり改修されない。)
③社宅・官舎(福利厚生用)
④民間のもの
があり、このうち団地不動産が取り扱い、よく考えられて設計しているのが、①の公団(現UR)の建てた団地のようです。
(千里ニュータウン 千里青山台団地)
よく一般のイメージ的に団地と言えば、全部同じ南面を向いた画一的で古い建物というイメージですが、特に公団が建てた団地は、元の地形を活かし、なるべく工事費も抑え、人の流れやコミュニティの形成のことまでよく考えられて設計しています。
社内的には決まった定型図面を用いるように決まっていたようですが、公団には寛容で創造的な社内風土があったようで、特に千里ニュータウンでは大阪万博の外国の関係者の宿泊先として作られた(万博終了後団地として利用)ため、自由な設計が出来たようです。
こういう大規模な計画の場合、まず土木の設計が入り、ランドスケープや都市計画の設計が入り、その後に建物の設計・設備の設計が入るのが通常ですが、千里ニュータウンの現場では全ての関係者が同じ部屋で、一つのドラフターに書き込みながら仕事を進めたそうです。
この色んな関係者をまとめるため、「団地係」というまとめる係がいて、全てを見渡してまとめることで上流から下流まで見通せた計画が出来たとのこと。
また、平日昼間は設計の仕事をし、夜は京都まで出向いて町屋のコミュニティーの作り方を調べ、土日でまとめていたようで、現在の設計にも重要なコミュニティーの形成等をいち早く研究もしていたとのこと。
これからの日本の会社の目指す方向について、よく革新的な取組み等で紹介される「アップル」や「グーグル」などよりも、昔の公団のあり方を見直すべきではないか、という経済学者もいるようです。
そして黒田設計ですが、外部の方には、「構造、設備が内部にいていいですね。」とよく言われます。いい面もあるが、十分に活かしきれてないのが現状ですよ、と答えます。それぞれの部署が互いを思いやり施主様の思い以上のことを思って仕事が出来ているか、自分の行動が外から(内からも)どう見られているか、どういう事務所が施主様に求められているのか、など、客観的に自社の強みを分析し、みんなが施主様の思いを実現できる事務所に向かって意識を変えることが出来なければ、変化する世の中に遅れをとり、生き残っていく事務所になれないのでは、と思います。仕事において公団の「団地係」のような存在になるのは、もっと知識と経験を貯めていかないといけないなー、と思った講演会でした。
(第一設計室)